過去画像の投稿が出来るのは今年だけとの事なので、思い入れのある2008年8月撮影の画像を再処理しました。思い入れがある理由ですが、それまで銀塩フィルム一眼レフカメラで撮影していたのを、この時からデジタル一眼レフに替えたからです。
銀塩ならば後日現像が出来てからガッカリしていたところです。
機材はEOS Kiss X2に200mm望遠レンズを付け、スカイメモR(ポータブル赤道儀)に載せています。カメラは撮影した2008年当時の最新型の入門機ですが、デジカメの進歩の速度から考えると、14年も経った現在から見ればほとんど骨董品です。また望遠レンズとスカイメモRは銀塩時代から使っていた古いものです。
その古い機材で、M31をISO1600で合計たったの6分(1分+2分+3分)だけの露出時間です。もちろんノータッチガイドです(オートガイドが気軽にできる時代ではありませんでした)。多段階露光の形式をとっていますが、本来はもっと段階のレンジ幅を広くとる必要があります。しかし当時はデジタル撮影のコツなど知りようもなく、かなり狭いレンジで段階露光してしまい、あまり意味がなかったかと思います。
そうして撮影した14年前の古い画像データを、現在所有している最新の画像処理ソフト類を使って再処理した結果が今回の投稿画像です。画像処理内容は下記のとおりとなります。
【前処理】
ダーク減算(フラット補正無し):RStacker
RAW現像:Lightroom
スタック(加算):ステライメージ9
【後処理】
周辺減光・背景ムラ補正:PixInsight DBE
デジタル現像:ステライメージ9
ノイズ低減:Photoshop Camera Rawプラグイン & Nik Collection Dfineプラグイン)
星と星雲分離:PixInshight StarNet++ 2.0 プラグイン
2x2ソフトビニング:ステライメージ9
ガイドズレ補正・スターシャープ:ステライメージ9
マルチバンドシャープ:ステライメージ9
Lab色彩調整:ステライメージ9
輝度レイヤーのストラクチャ強調:Photoshop Nik Collection Silver Efex Proプラグイン
ノイズ低減・星雲細部強調:Photoshop Topaz DeNoiseAI プラグイン
トーンカーブ調整・彩度調整:Photoshop
トリミング・Jpeg出力:Photoshop
そして下が2008年当時に処理した画像ですが、再処理版である今回の投稿画像と同じ元データとは思えないほど貧弱です。デジタル画像処理に関する私自身の習熟度も向上していますが、それよりも各種画像処理ソフト・ツールがいかに進化しているか実感できます。
*処理はステライメージのみ使用・トリミングあり。詳細は不明(記憶なし)
なお、この2008年の初回処理版は今見れば貧弱ですが、当時としてはたったの6分でここまで写ったことに感動してしまい、その勢いで「星ナビ」に投稿したところ、「何ら工夫もない超お手軽撮影なのにここまで写る例」として掲載されてしまいました。偶然にも同じM31が表紙の2008年11月号でしたが、表紙のM31はとても素晴らしいものでした。今考えると無謀なことをしました。
話は変わって、下の画像は1996年に撮影したM31です。今回と全く同じ200mm望遠レンズとスカイメモRを使っていますが、カメラが銀塩フィルム一眼レフ(EOS55)です。
・1999年10月9日・兵庫県氷上郡春日町
・キャノンEOS55、EF200mm F2.8L II USM F2.8開放
・露出約10分:ケンコースカイメモRにて自動追尾
・フジカラーG800
・ネガをフィルムスキャナで取り込み、画像処理(トリミング・色調など)
同じ光学系による銀塩版は、今回の再処理版どころか2008年の初回処理版にすら及びません。カメラがデジタル化されたことは、便利さだけでなく、画像のクオリティーも飛躍的に向上させました。特にパソコンによる画像処理との相性の良さは銀塩とは比べ物になりません。
ですが、これも今の時点から見た印象であって、1996年当時の自分にとっては、アンドロメダ銀河の渦巻きが分かる写真を自分自身の手で撮影できるということ自体が感動でした。天文雑誌にはベテランの方々が高価な機材で長時間苦労して撮影した素晴らしい銀塩写真が毎月掲載されており、それらには到底及びませんが、普通の望遠レンズとカメラをポータブル赤道儀に載せて10分露出するだけで、この程度は写せるということが分かりました。
まとめると、同じ光学系・赤道儀を使っても、カメラを銀塩からデジタルにすることでクオリティーが飛躍的に向上し、さらに同じ元画像データを使っても、画像処理技術が進化するとさらに向上することが分かりました。それぞれの時点において新鮮な感動があるので、これからも新しい道具や技術への投資はやめられないと思います。
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